大学不認可問題田中大臣のお詫び会見の敗着に至極残念

 衝撃を与えた3大学の新設不認可決定から、わずか4日で認可方針へと方向転換を図った田中真紀子文部科学相。50人以上が集まった6日の会見では、正論あり暴論ありのまさに“真紀子劇場”となった。
 「大学の乱立に歯止めをかけて教育の質を向上させたい」
 田中文科相は冒頭、こう述べ、初めて大学設置・学校法人審議会の答申を覆し、3大学を不認可とした自らの判断に間違いがなかったことを、身ぶり手ぶりを交えて強調した。
 設置審の答申を尊重して認可するという、戦後長く続いてきた認可手続きについて「事なかれ主義」と切って捨て、自らが進んで「劇薬」となって改革に臨む姿勢をアピールした。
 田中文科相はまず、委員29人中22人が大学関係者で構成される設置審をやり玉に挙げた。「いい意見は出されるが、数カ月に1回しか開かれていない」と、委員構成に加え、議論時間の少なさも問題と指摘した。
 さらに、3月末までに大学新設を申請し、10月に設置審の答申を受けて認可され、翌年4月から開学となる現行システムについても「極めて不自然だと思っている」と疑問視。「認可されてから(校舎の)工事を始めるなり、教授を呼ぶなりというのなら分かるが、なぜかとっくにビル(校舎)が建っていて教授も確保されている。不思議だと思わないか」とし、「どこかからサインが出てたんでしょうかね」と皮肉った。
 記事本文の続き 一方、暴論も飛び出した。3大学の受験予定者らに動揺が広がっていることについて「答申を受けて判断するのが大臣の職能。したがって『かわいそうじゃないか』という意見があるようだが、それには当たらない」と言い放った。
 また、3大学に落ち度はあったのか問われると「個別の大学のことは全然考えていないし、落ち度なんていう細かいところまでは分からない」と語った。
 田中文科相は約20分間で会見を自ら打ち切った後、会見場を後にしたが、「ちょっと誤解を与えたらしいことに今気付いたので…」と言いながら再び登場。3大学について「全部、不認可ということではない」と改めて新基準で審査する意向を表明。「新基準が分かるように言おうと思ったら、質問が来たので混乱しちゃったんですけれど、混乱もしていませんけど…」と言って、質問が飛び交うなか足早に立ち去った。
 
 
これは2~3日前の報道である。
 
 

 田中真紀子文部科学相が来春新設予定だった3大学を不認可とした問題で、田中文科相は6日、閣議後の記者会見で「できれば年内に認可基準を見直し、新しい基準に照らしてもう一回審査する」と述べ、認可に可能性を持たせた。ただ、3大学は認可が決定するまで学生募集などはできず、来春の開学に向けて難しい状況が続いている。
 不認可とされたのは秋田公立美術大(秋田市)▽札幌保健医療大(札幌市)▽岡崎女子大(愛知県岡崎市)。文科省は当面不認可の通知を発送せず、新基準での審査後に正式決定する。3大学は理事長らが7日に文科省を訪れ、認可を求める。
 田中文科相は「大学が乱立し少子化で経営難のところがある。日本の将来を見渡した場合、大臣として放置できない」と話した。さらに「審議会答申を受けて判断するのは大臣の職能。大学の乱立に歯止めをかけて教育の質を向上させたい」と述べ、改めて不認可とした理由を説明した。
 だが、会見終了後「誤解を与えた」として再び会見室に姿を見せ、「認可の仕組みについて、できるだけ早いうちに検討会を立ち上げる。年内にできればいいが早めに結論を出せればいい。改めて見直し後の基準に照らして検討する」と述べた。
 3大学のうち秋田公立美術大と札幌保健医療大は開学を見込んで改組予定の短期大学と専門学校の学生募集を既に停止。岡崎女子大は短期大学の入学定員を減らしている。田中文科相は、3大学に進学予定だった学生への影響を問われ「許認可の仕組み自体を変えるわけですから粛々とやるしかない。(先月解散命令を出すことが決まった)堀越学園は急に止まった。(3大学は)幸いまだスタートしていない」と答えるにとどまった。また、田中文科相は「事前に総理から『(思う通りに)すすめてください』と言われている」と話した。【石丸整、苅田伸宏】
 
 
こちらは6日の毎日の報道である。
 
 

 田中真紀子文部科学相は7日、不認可としていた2013年度新設予定の秋田公立美術大(秋田市)▽札幌保健医療大(札幌市)▽岡崎女子大(愛知県岡崎市)について「認可する」と述べた。同日の衆院文部科学委員会出席後、記者団に答えた。文科省は近く正式に通知する。新設を認めた審議会答申を覆す異例の「不認可」からわずか5日。3大学や地元自治体などの猛反発を受け、再審査に言及するなど判断は二転三転。最後は全面撤回し、3大学の来春開学が決まった。
 田中文科相は出席した文部科学委員会で、川内博史委員長(民主)から発言を促され「3大学の新設については、現行の制度にのっとり適切に対処する」と発言。委員会の終了後「彼ら(3大学)を認可する」と明言した。認可時期は「事務的なこと」と述べ、決裁後に速やかに通知する見通しを示した。
 不認可の判断を一転させた理由について「(大学の認可の在り方に)一石を投じなきゃと思っていた」とし「(大学設置を検討する審議会の改革を)やってみたいと思ったら大臣に着任してすぐで、きつかった。個人攻撃をされても結果オーライならいい。全党が『方向性はいい』と言ってくれた」と話した。
 田中文科相は2日の記者会見で「大学の数が多すぎて教育の質が低下している。認可の有り様を見直したい」と問題提起し、3大学の不認可を表明した。批判を受け、6日には「新基準で再審査する」と「不認可」を見直す方針を示し、文科省も「不認可処分は出していない」と弁明。混乱を招いていた。
 今回の全面撤回発言について、文科省の幹部は「文部科学委員会で約5時間半の質疑を受けて大臣の雰囲気が変わった」と「変心」の理由を分析した。
 3大学を認可する一方、文科省は田中文科相の「問題提起」を受け、新設大学の認可基準や大学設置・学校法人審議会の在り方を見直す検討会を発足させる。14年春の開校を目指す学校法人や自治体の申請に間に合うよう、13年2月中に結論を出す方針。【石丸整】
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 ◇田中文科相の発言の推移
11月1日 大学設置・学校法人審議会が「認可」答申
          ↓
   2日 閣議後の記者会見「認可するわけにはまいりません」(不認可を表明)
          ↓
   6日 閣議後の記者会見「新たな基準に照らしてもう一回審査します」(不認可を撤回)
          ↓
   7日 衆議院文部科学委員会「現行制度にのっとり適切に対応する」(新基準による再審査を撤回)
          ↓
   同日 同委員会後、記者団に「認可します」
 
 
そしてこちらは昨日の毎日の報道だ。
 
 

 この大学の新設認可の問題について、私は問題となった次の日の4日に「来春3大学の開校不認可 田中真紀子大臣良くやったと私は歓迎したい」と題したブログを紹介した。それほど私には田中真紀子大臣にはタブーに挑戦した姿勢に同感を覚えたものであった。がこれまでの報道を見てみるに、どうも私が最初に抱いていた田中真紀子大臣の考えとは違っていたようである。
 思うに田中大臣はかねてより良く思っていなかったこの認可の問題に、カーッと来て深考せず発言してしまった感が強い。ところが余りの反響でうろたえてしまったのではないか。一度振り上げた拳、どうも降ろす事出来なく昨日のお詫び会見となったものと私は理解する。
 私はこの問題は田中大臣の言う通りでそのまま通せばよかったのに、何せ受験生と言う被害を被る学生に配慮した形を取った事で一見落着と相成った。
 本当に受験生は被害者そのものだったが、被害者を装った、大学当局と審議会の面々、それに文部科学省の官僚や職員は全て田中大臣に責任を押し付け、自分らは被害者そのものの形を取った事に対し私は怒りを禁じえない。
 そもそもこの問題、当初私が指摘したように、今までの役所同士の馴れ合いがもたらした、弊害そのものと言えよう。田中大臣は決して間違っていなかった。それこそその認可・不認可は大臣の専権事項であったにもかかわらず、大学当局と審議会の面々、それに文部科学省の官僚や職員は、さも内示が認可と言って大学当局に指示したものと変わらなく、悪いのは彼らの方である。こんな事が今まで慣習として行われてきたのであろう。そこに田中大臣は正しく一石を投じた事は紛れも無い事実である。