やはり、この男に「反省」という2文字はないらしい。国会でイスラム国事件をめぐる対応について追及を受けている安倍首相だが、とにかく「テロリストに屈する必要はない」「テロリストに配慮する必要はない」の一点張り。人道支援よりテロリストと闘うことを強調した演説の問題点を指摘されると、「テロリストを批判するなというのか」と逆ギレしてしまう有様だ。
批判されているのは、人質をとられている状況で挑発的な内容を口にする必要があったのかという外交戦略、交渉技術の問題なのに、「悪いのはあいつらだ!」とわめきたてる。
思わず、小学生か!と突っ込みたくなるが、これは性格の話だけではない。国会ではエラソーに中東支援の意義とイスラム国との闘いを強調している安倍首相だが、実は中東の歴史や地理、そしてイスラム国の成り立ちについて、小学生並みの知識しか持ち合わせていないのではないか、という疑念がもちあがっているのだ。
きっかけは、1月25日に放映されたNHKの番組『日曜討論』だった。この日の同番組は、各党の党首に喫緊の課題をインタビューするという内容だったのだが、湯川遥菜さん、後藤健二さん2 人の拘束映像がアップされた直後ということで、当然、イスラム国問題が焦点になった。
そして、キャスターが「イスラム国の側は日本の人道支援が、中東の敵対組織の軍事力の増強の余裕を生むという論法で日本を批難しているが」と問いかけたところ、安倍首相はこう答えたのである。
「そもそも、ではなぜ、多くの避難民がでてしまったのかということであります。シリアからの難民、現政権にも大きな原因がありますが、同時にイスラム国、ISILの振る舞いにも大きな原因があるわけでありますし、トルコからの難民はまったくそのとおりであると言ってもいいとおもいます」
安倍首相は難民を生み出したのがイスラム国、ISILと言いたかったようだが、その典型例としてあげたのがなぜか、「トルコからの難民」――。
わざわざ説明するまでもないが、トルコはイラク、シリアからの難民を受け入れている国であって、難民を出してはいない。いったいこの人は何を言っているのだろう、と思ったが、まあ、いい間違いは誰にでもあるし、と思い直し、そのまま聞いていると、安倍首相はさらにこう続けたのだ。
「ISILがトルコ、イラクに侵入して行った結果、多くの難民が発生した。」
やっぱり安倍首相の頭の中では、ISILがトルコに侵入して難民が発生したことになっているようなのだ。重ねて言うが、トルコはISILの侵入を受けてもないし、難民も発生していない。
また、仮に「トルコ」が「シリア」の言い間違いだったとしても、安倍首相はこの発言によってもうひとつ、決定的な認識不足を露呈している。それは「ISILがイラクに侵入して行った」というくだりだ。
ISILはどこか別の場所からイラクに入ってきたのではない。イラクで生まれたのだ。言っておくが、これは言葉の使い方の問題じゃない。
イスラム国誕生の背景には、アメリカのイラク攻撃がある。アメリカの一方的な攻撃によってフセイン体制が崩壊し、その混乱の中でバース党の残党とイスラム過激派が結びついてできあがった組織がISILなのだ。イスラム国を率いているとされるバグダディも元バース党員である。あのとき、ブッシュ政権が「大量破壊兵器を所有している」というデマに基づいてイラク攻撃をしなかったら、イスラム国は存在しなかった。そういう意味では、ブッシュ政権のイラク戦争を全面支持した日本も同等に責任を負っている。
安倍首相にはこの歴史認識がまったく欠落しているのだ。おそらく、この人物の頭の中には、どこかで生まれたカルト組織がイラクとシリアに侵入してきて、テロ活動を繰り広げている、そんな程度の考えしかないのだろう。
そういう意味では、安倍首相の中東歴訪での言動は確信犯ではない。中東に対する理解や知識がないからこそ、湯川さん、後藤さんが人質に取られているなか、ヒーロー気分で中東歴訪に出かけ、挑発的な台詞を口にすることができたのだ。
まったくこんな人物に外交をゆだねていると思うとぞっとするが、安倍首相の怖さは無知だけでない。
実は、この日の『日曜討論』でも、安倍首相はその危険な本質をかいま見せている。それは集団的自衛権に話が及んだ際のことだ。キャスターが15年1月の世論調査では、集団的自衛権の法整備について「賛成25% 反対30%」だったと指摘。どのように国民に理解を求めて行くか、を問うたところ、安倍首相はこう答えたのである。
「前は、もう少し、反対の数のほうが多かっただろうと思います。それは、たとえば徴兵制度になるとかですね、戦争ができる国になる、という間違ったキャンペーンがありました。その影響があったのだろうと思いますが、どうやらそうではないということで、どちらともいえない、が多くなって、反対が少なくなってきたのだろうと思います。」
反対意見はすべてサヨクの捏造にしようとするところも相変わらずだが、それ以前に、これ、「反対が少なくなってきた」というのが真っ赤な嘘なのだ。昨年、同じNHKの世論調査で行った集団的自衛権の行使に関する調査結果は以下のようなものだった。
・4月 できるようにすべき 24% すべきでない 22% どちらとも言えない 45%
・5月 できるようにすべき 30% すべきでない 23% どちらとも言えない 37%
・6月 できるようにすべき 26% すべきでない 26% どちらとも言えない 41%
賛成はほとんど同じ。反対はむしろ、22%から30%と増えている。それを「反対が少なくなってきた」などと平気で強弁するのだから、開いた口がふさがらない。
だが、これが安倍首相のやり口なのである。無知と単純思考がもたらす失政を嘘でごまかし、事実を都合よくねじまげ、国民をさらに煽動する。この男を放置していたら、この国は必ず戦争に引きずり込まれるだろう。そうなってからでは遅いと思うのだが……。(田部祥太)
批判されているのは、人質をとられている状況で挑発的な内容を口にする必要があったのかという外交戦略、交渉技術の問題なのに、「悪いのはあいつらだ!」とわめきたてる。
思わず、小学生か!と突っ込みたくなるが、これは性格の話だけではない。国会ではエラソーに中東支援の意義とイスラム国との闘いを強調している安倍首相だが、実は中東の歴史や地理、そしてイスラム国の成り立ちについて、小学生並みの知識しか持ち合わせていないのではないか、という疑念がもちあがっているのだ。
きっかけは、1月25日に放映されたNHKの番組『日曜討論』だった。この日の同番組は、各党の党首に喫緊の課題をインタビューするという内容だったのだが、湯川遥菜さん、後藤健二さん2 人の拘束映像がアップされた直後ということで、当然、イスラム国問題が焦点になった。
そして、キャスターが「イスラム国の側は日本の人道支援が、中東の敵対組織の軍事力の増強の余裕を生むという論法で日本を批難しているが」と問いかけたところ、安倍首相はこう答えたのである。
「そもそも、ではなぜ、多くの避難民がでてしまったのかということであります。シリアからの難民、現政権にも大きな原因がありますが、同時にイスラム国、ISILの振る舞いにも大きな原因があるわけでありますし、トルコからの難民はまったくそのとおりであると言ってもいいとおもいます」
安倍首相は難民を生み出したのがイスラム国、ISILと言いたかったようだが、その典型例としてあげたのがなぜか、「トルコからの難民」――。
わざわざ説明するまでもないが、トルコはイラク、シリアからの難民を受け入れている国であって、難民を出してはいない。いったいこの人は何を言っているのだろう、と思ったが、まあ、いい間違いは誰にでもあるし、と思い直し、そのまま聞いていると、安倍首相はさらにこう続けたのだ。
「ISILがトルコ、イラクに侵入して行った結果、多くの難民が発生した。」
やっぱり安倍首相の頭の中では、ISILがトルコに侵入して難民が発生したことになっているようなのだ。重ねて言うが、トルコはISILの侵入を受けてもないし、難民も発生していない。
また、仮に「トルコ」が「シリア」の言い間違いだったとしても、安倍首相はこの発言によってもうひとつ、決定的な認識不足を露呈している。それは「ISILがイラクに侵入して行った」というくだりだ。
ISILはどこか別の場所からイラクに入ってきたのではない。イラクで生まれたのだ。言っておくが、これは言葉の使い方の問題じゃない。
イスラム国誕生の背景には、アメリカのイラク攻撃がある。アメリカの一方的な攻撃によってフセイン体制が崩壊し、その混乱の中でバース党の残党とイスラム過激派が結びついてできあがった組織がISILなのだ。イスラム国を率いているとされるバグダディも元バース党員である。あのとき、ブッシュ政権が「大量破壊兵器を所有している」というデマに基づいてイラク攻撃をしなかったら、イスラム国は存在しなかった。そういう意味では、ブッシュ政権のイラク戦争を全面支持した日本も同等に責任を負っている。
安倍首相にはこの歴史認識がまったく欠落しているのだ。おそらく、この人物の頭の中には、どこかで生まれたカルト組織がイラクとシリアに侵入してきて、テロ活動を繰り広げている、そんな程度の考えしかないのだろう。
そういう意味では、安倍首相の中東歴訪での言動は確信犯ではない。中東に対する理解や知識がないからこそ、湯川さん、後藤さんが人質に取られているなか、ヒーロー気分で中東歴訪に出かけ、挑発的な台詞を口にすることができたのだ。
まったくこんな人物に外交をゆだねていると思うとぞっとするが、安倍首相の怖さは無知だけでない。
実は、この日の『日曜討論』でも、安倍首相はその危険な本質をかいま見せている。それは集団的自衛権に話が及んだ際のことだ。キャスターが15年1月の世論調査では、集団的自衛権の法整備について「賛成25% 反対30%」だったと指摘。どのように国民に理解を求めて行くか、を問うたところ、安倍首相はこう答えたのである。
「前は、もう少し、反対の数のほうが多かっただろうと思います。それは、たとえば徴兵制度になるとかですね、戦争ができる国になる、という間違ったキャンペーンがありました。その影響があったのだろうと思いますが、どうやらそうではないということで、どちらともいえない、が多くなって、反対が少なくなってきたのだろうと思います。」
反対意見はすべてサヨクの捏造にしようとするところも相変わらずだが、それ以前に、これ、「反対が少なくなってきた」というのが真っ赤な嘘なのだ。昨年、同じNHKの世論調査で行った集団的自衛権の行使に関する調査結果は以下のようなものだった。
・4月 できるようにすべき 24% すべきでない 22% どちらとも言えない 45%
・5月 できるようにすべき 30% すべきでない 23% どちらとも言えない 37%
・6月 できるようにすべき 26% すべきでない 26% どちらとも言えない 41%
賛成はほとんど同じ。反対はむしろ、22%から30%と増えている。それを「反対が少なくなってきた」などと平気で強弁するのだから、開いた口がふさがらない。
だが、これが安倍首相のやり口なのである。無知と単純思考がもたらす失政を嘘でごまかし、事実を都合よくねじまげ、国民をさらに煽動する。この男を放置していたら、この国は必ず戦争に引きずり込まれるだろう。そうなってからでは遅いと思うのだが……。(田部祥太)
これ「安倍首相の中東の知識は小学生並み? イラクとシリアとトルコの区別もついていない疑惑が…」と題した"思わず誰かに言いたくなるネタの宝庫"「ネタりか」の2015/2/10 22:30 のコラムである。