最近の世論調査は、メディアによって、内閣支持率や政党支持率などでバラつきがあるため、「国民の声を本当に反映していないのではないか」「正確ではない」という声が少なくない。場合によっては、“数字の操作”があるのではないかという指摘さえある。
日本では、毎月1回の定例世論調査をNHK、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、共同通信、時事通信、ANN(テレビ朝日/報道ステーション)、日経新聞(テレビ東京と合同)、産経新聞(FNNと合同)、JNN(TBS)、NNN(日本テレビ)と、計11のメディアが個別に行っている。
調査方法は、時事通信だけが個別面接形式で、調査員が対象者に出向いて質問し、回答を得る。複雑な質問が可能なので、意図が誤解されることが少ない。残りの10社は電話形式で、これは90年代前半に普及した調査方法だ。初期は電話帳や住民基本台帳をもとに電話をしていたが、00年以降は、ランダムな数字を組み合わせて電話番号を作り、それが実際に使われているかを判定後に電話をかける方法が採用された。
各社とも、調査対象者は1000人程度かそれ以上。1000人を調査すると、想定最大誤差が±3・1ポイントに収まるからだ。しかし実際に発表されている各社の内閣支持率は、それを大きく超えたばらつきがあるという。
安倍政権下で、最も多くの世論調査が同一の日程で実施されたことがあった。15年9月19日に安保法(安全保障関連法)が強行採決されたときに行われた調査だ。内閣支持率は最も低い朝日と毎日が35%、最も高いJNNが46・3%となっており、その差は10ポイントを超えたという。
その原因を三春氏は著書の中でこう分析している。
〈実は偏りが生まれる最大の原因は、各社の内閣支持率の定義に違いがあることなのです。(中略)各社の内閣支持率の定義に違いがあるとはどういうことでしょうか。例えば朝日新聞は、世論調査の最初の質問で「あなたは安倍内閣を支持しますか。支持しませんか」と聞いています。それに答えて「支持する」を選んだ分が内閣支持率とされ、「支持しない」を選んだ分が不支持率とされます。日経新聞でも、最初の質問で「あなたは安倍内閣を支持しますか、しませんか」と聞いて「支持する」「支持しない」の回答を集めます。しかし日経はそこでは終わりません。「いえない・わからない」とした人に対して、「お気持ちに近いのはどちらですか」と回答を促し、あらためて「支持する」か「支持しない」かを選んでもらうのです。このような質問の仕方を重ね聞きと言って、態度を表明しない層を減らす効果を持っています〉
〈JNNは4択で聞き、「非常に支持できる」と「ある程度支持できる」の合計を内閣支持率に、「あまり支持できない」と「全く支持できない」の合計を不支持率とします。この方式だと態度を表明しない層が極めて少なくなるため、内閣支持率も不支持率も他社より高くなりがちです〉
政党支持率の差は最大30ポイント超
内閣支持率以上に、メディア各社の偏りが大きいのが政党支持率だという。13年から18年までに発表された各社の政党支持率を平均してみると、自民党は最も高いANNで平均45・38%。最も低い時事通信では25・68%と、実に20ポイント近い差がある。また、支持政党を持たない無党派層は、最も高い時事通信で59・64%。最も低いANNでは27・32%と、その差は30ポイントを超えているのだ。
これでは、どの世論調査が正確なのか分からない。
三春氏は、数値が大きく異なる原因を、政党名の読み上げの有無にあると分析する。
〈内閣支持率の場合は、回答は基本的に支持か不支持に集約されるわけですから、回答者にとって意志の表明が容易でした。しかし政党は数多くあるため、回答者はその中から一つを選び取る必要があります。そこで、「どの政党を支持しますか」と聞いた後で選択肢を列挙した上で回答を求めるのか、列挙せずに回答を求めるのかという違いが生じるのです。政党支持率では、調査方法の影響も内閣支持率より強く表れます。(中略)各社ごとの政党支持率の平均からは、個別面接形式を採用している時事通信の政党支持率が非常に低く出ることが読み取れます。(中略)電話形式の10社と比べ、個別面接形式の時事通信では無党派層が1・67倍となっています。無党派層は支持政党を持たない人たちのことですから、これは裏を返せば政党支持率が低く出るということにほかなりません。そこで政党支持率を見ていくと、時事通信では野党の支持率が総じて電話形式の半分程度となっています。(中略)自民党もまた0・66倍と低くなっています。その中で固い基盤を持つ公明党だけが個別面接形式でも電話形式でもほぼ同じ水準になることは興味深いですね。個別面接形式では調査員と対面して回答することになるため、顔が見えない電話形式と比べて意志の表明をためらう人が多くなるとみられますが、公明党に限っては支持者にそのような違いがないわけです〉
“誘導”される政策や時事問題
〈最も賛成に偏っている読売新聞では、「これまで検討されていた「共謀罪」の要件を厳しくし、テロ組織や組織的な犯罪集団が、殺人などの重大犯罪を計画・準備した段階で罪に問えるようにする「テロ準備罪法案」に、賛成ですか、反対ですか」という聞き方がされています。対して賛成が低く出た共同通信では、「政府は犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を、今国会で成立させる方針です。政府はテロ対策に不可欠としていますが、人権が侵害されかねないとの懸念もでています。あなたは、この法案に賛成ですか、反対ですか」〉
賛成に誘導するか、反対に導くか、質問ひとつで数値が大きく変動する世論調査。これでは、“世論操作”と呼ばれても仕方がないのではないか。
週刊新潮WEB取材班
私も今回の参議院選で自動電話を二度ほど受けたが、あのコンピュータから発せられる無味乾燥な感情の無い義務的音声を聞くと、無性に腹が立ってまともに答えるのが馬鹿らしくなって黙って切った事がしばしばだ。しかも夜のプライベート時間帯の19:00~20:00に掛って来るのが通例だ。しかも生身の人間の声ならいざ知らず、一方的な電話の掛け側の主導でされると、ホント頭に来て真剣さが薄れてしまうのは私だけでは無いと思う。これが生身の本当の女性の声ならば、時間が時間だけにご苦労さんの意味で真剣に聞いて答えたいと思うが、自動音声だから何か馬鹿にされてる気がしてしまう。こんな調査だったら、受けた生身の人間だったら中正の感は浮かばず、嫌悪的批判の声が起きても不思議ではない。直接の個別面接形式での調査ならばそんなにバラつきは無くなる可能性は多くなる筈だ。余りに違う結果になるから調査メディア側は修正をするからそのメディア毎の違いが出るのであろう。つまりは真の調査データではなくなるという事になる。だが安倍政権以前までのメディアはそれなりに自己検証の域の意識は持っていたが、安倍政権からは「モリカケ」問題を見るまでもなく、国の行政機構からのデータ捏造とトップである安倍首相からしての「真摯に丁寧に説明」しない嘘付きの慢性化を見ればそれに連なる機構に批判は向けれないのが現実である。こんな政権初めてだ!