先日のローカル紙に現安倍政権の現状を如実に表した元東大学長の佐々木毅さんのコラムがあったので紹介したい正に的を得た見方であり流石だと感じた

 通常国会は会期の延長もなく終了し、予定通り参院選が単独で行われることになった。一時吹き荒れた解散風は消え、衆参同日選はなくなった。今回の選挙は統一地方選の後に参院単独選挙が続く「亥年選挙」に当たり、自民党が苦戦すると言われてきたことから、直前まで同日選が取り沙汰されたのであった。
 同日選の取りやめは、参院選は単独で戦えるという安倍晋三首相の自信の表明であろう。実際、直近      の世論調査を見る限り、内閣支持率に目立った変化は見られない。
 さて選挙の争点であるが、消費税率引き上げや憲法改正働き方改革などのほか、陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)などに配備が計画されている地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」が思い浮かぶ。金融庁の審議会が、年金だけでは老後の生活資金が2千万円足りなくなると報告した老後資金問題もある。
 安倍政権にとって、地上イージス問題や老後資金問題は想定外の出来事であり、特に後者については慌てて火消しに走ったように見えた。その結果、世間の関心はかえって高まり、老後資金問題は独り歩きを始めている。選挙期間中の政治家たちの発言などによっては、世論が大きく動く可能性がなお残されている。
 安倍政権は争点を少なくすることを戦略としてきた。その一例が貿易を巡る日米交渉を先送りにしたことである。当然、そのツケは選挙後の夏以降に払わなければならない。
 現在の世論の動向は非常に興味深いものがある。すなわち、現状に対する満足感がある一方で、将来に対する深刻な不安が浸透していることは見逃せない。安倍政権は、現状の不満や不安に対する素早い柔軟な対応力において歴代の政権をはるかに凌駕している。
 その意味で、現状への満足感と政権運営の手法とは表裏一体の面がある。特に大都市圏の若年層にそうした現象が見られる。他方で、将来不安への対応は老後資金問題にフタをしようとしたように、先送りの姿勢が目につく。
 今度の参院選は令和時代の担い手を選ぶ最初の選挙である。令和の国政の基本的テーマとは何か。それは少子高齢社会の現実が有無を言わさずに目の前に迫ってくる時代であることである。つまり、少子高齢社会についての頭の体操と作文の段階が終わり、われわれの社会の持続可能性の問題がさまざまな形を取って現れるということである。
 例えば、地域の持続可能性という形で問題になるかもしれないし、東京周辺では医療・介護供給体制の持続可能性という形を取って現れることにもなろう。老後資金問題にしても、個人や家族の持続可能性にとって最大の関心事であることは議論の余地がない。
 政治家や官僚は「頭の体操と作文」のプロであるが、令和時代には持続可能性問題について本当に有権者を巻き込んだ本音の議論をしなければならない。「有権者を巻き込んだ本音の議論」とは遠くから人畜無害な美辞麗句を並べ立てることではなく、泥まみれになりながらも有権者とき合うことである。
 令和時代にはそれにふさわしい政治家を国会に送りたいものである。もちろん、有権者国民主権の一人の担い手として、しかるべき勉強と準備を整えるのは当然である。
 われわれの持続可能性問題の一つとして、国際関係の変動を念頭に、日本の目標や価値の明確化を踏まえた国際的立ち位置をどう守るかという大問題がある。同盟国である米国は万事が国内事情次第の感があり、これまでのような安定性を期待できない。他方で中国との共存可能性を模索する必要がある。
 一言で言えば、本当の外交の時代が始まるが、この面での人材の払底は極めて深刻である。こうしたテーマは票にならないとして選挙の場に無縁なものとされがちであるが、いつまでも現状のままでよいということにはならない。
 参院選の結果次第では、国内政局が大きく動く可能性がある。例えば、結果が政府・自民党にとって芳しくない場合、ポスト安倍を巡る動きが出てくるのは避けられない。逆の結果の場合、政権の活力を維持する手段として今秋の衆院解散の可能性が浮上することになる。(元東大学長)
 
 
これ「令和らしい国政選挙を」と題したあるローカル紙6月28日(金)の朝刊の記事である。
 
 
正にこの佐々木さんが言ってるように、この参議院選において現政権が新しい時代に沿って運営されるかの瀬戸際の大事な選挙であることを示している。我々が思っている事を代弁した素晴らしい記事である。感服した。