シンガポール会談では、韓国と日本にとっての「計算違い」も続々と表面化しており、両政府内では怒りや当惑が広がっている。
■米国は北朝鮮の安全を保証
ここで会談後に発表された共同声明を、簡単におさらいしておこう。
しかし、戸惑いが広がっているのは、トランプ大統領が記者会見で述べた言葉だ。
毎年行われている米韓合同軍事演習について「費用がとてもかかる。その大半(の費用)をわれわれが負担している」と指摘した上で、「交渉中という状況の下で、軍事演習を行うのは、挑発的であり、不適切だと思う」と語ったのだ。明言はしなかったが、これは演習中止の可能性を示したものである。
■在韓米軍を撤退?
また、在韓米軍撤退もにおわせた。会見ではこう語った。
「選挙中にも私は言及した。よくおわかりの通り、米軍を撤収したいのが私の全般的な目標だ。私は多くの損失を持ってくるウォーゲーム(war-game)はしたくない。在韓米軍はいつか撤収するだろうが、今ではない。戦争介入はやらなくてもいい。費用も節減されるだろう。そうなったらとても多くの費用が節減されるだろう」
北朝鮮がまだ核放棄を本格化させない段階で、北朝鮮に圧力をかけるための軍事演習を中止し、在韓米軍の撤退まで言及してしまったのである。安全保障の視点ではなく、全てを「カネの問題」として見ているとまで言い切ってしまった。
軍事演習の中止は、韓国政府側も事前に聞いていなかったようだ。韓国国防省は慌てて「真意を把握する」とのコメントを出している。
この発言について、かねてから在韓米軍の見直しを主張している韓国青瓦台(大統領府)の文正仁統一外交安保特別補佐官は、ニュース局JTBCのインタビューに答え、「軍事演習を全て中止するという意味ではなく、グアムの米軍基地から韓国まで来るのに費用がかかる、B52などの軍用機の飛行を取りやめるという意味だろう」ととりなした。
米韓合同軍事演習の中止や在韓米軍の撤退は、国民的な議論を呼ぶ大きな問題であり、まず、南北の交流を進めたい文在寅政権としては、なんとしても避けたいところだ。
文大統領は、訪米した際にトランプ大統領から発言を遮られるなど、たびたび無礼な対応を受けている。このため、韓国の保守系野党の指導者が、「金正恩は、核を持っているから丁重に扱われる」と発言。「韓国も核を保有すべきなのか」との論議を巻き起こしている。
■人権問題への関心が低いことは明白
日本にとっての計算違いは、拉致問題だろう。トランプ大統領は、会談で拉致問題に言及したことを明らかにした。日本政府は、それはそれで歓迎している。しかし、トランプ大統領の本音として、人権問題への関心と優先順位が低いことは明白だった。
共同声明の中には「戦争捕虜・行方不明兵の遺体返還」問題が入っていたが、これはあくまで米国に関することである。より広い概念である「人権問題」という単語は声明には見あたらなかった。
核弾頭の数についてなのか、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や、核関連施設、技術者の転職なども含めた計算なのか、「20%」という数字の真意ははっきりしない。しかし、「20%」という数字はきわめて低いハードルであり、非核化が始まった初期段階で制裁を解除する考えを示した、と受け取られている。
つまり、北朝鮮が求めている「段階的解決」を事実上受け入れたといえるだろう。
■頼れば頼るほど、請求書(ツケ)が回されてくる
こんな情勢の中、「米国とは完全一致」が口癖の安倍首相も、もはやトランプ大統領に依存することはできない。安倍首相は、拉致問題をめぐって金正恩委員長との首脳会談に自ら打って出るとは言っているものの、トランプ大統領の態度をみた金委員長は強気の姿勢で臨んでくることだろう。
やはりズル賢い朝鮮民族にしてやられた。北の暴国は全てお見通しだった。トランプと言う経済・企業人を。こうすればカネがかからない、得になるの一点張りに、かねてからのトランプの「アメリカファースト」の経済政策が読まれていた。北の将軍にことごとく見透かされていたため米国の負担が少ない方策を突かれたために、全て合意形成され、実務は共同宣言後に圧縮され、後の祭りに等しかった。そのお蔭で、北は濡れ手に粟のタダ同然の核廃棄である。米国も自腹は痛まず、日韓に丸投げだ。こんな共同宣言等他に無い。費用負担の韓国・日本は蚊帳の外だからだ。米朝当事国は一切のカネをかけずに懸案事項の解決だ!日韓にはこんな理不尽到底承服できないが、韓国には祖国統一、日本には拉致問題と、弱みを突かれた完全惨敗である。文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領と我日本国安倍首相の責任はかなり大きいと知るべきである。