安倍晋三首相は憲法記念日3日に公表されたビデオメッセージで「いよいよ憲法改正に取り組む時がきた」と改めて改憲への意欲を強調した。改憲に向けた機運はしぼむが、改憲を訴え続けなければ、9月の自民党総裁選での3選どころか、政権維持もままならないという厳しい政権の状況を反映しているとの指摘が出ている。
メッセージを寄せたのは、昨年の憲法記念日に首相が自衛隊明記と2020年の改正憲法施行を目指すと表明したのと同じ保守系の団体が主催した集会だ。出席者の多くは、首相を支持してきた保守層だとみられている。首相は、自衛隊が違憲と言われる状況を改善する必要性に触れ「皆さん、この状況のままでいいのでしょうか」と同調を求めた。
実際には改憲を取り巻く政治環境は昨年よりも厳しさを増している。「森友学園」への国有地売却、「加計学園」の獣医学部新設を巡る疑惑は広がり、与野党の対立が、国会での改憲論議を封じている。二つの問題はどちらも長期政権の弊害が根源にあると指摘され、野党の一部は憲法改正には反対していないが「安倍政権による改憲」に反対している。
こうした状況にもかかわらず、首相が改憲への意欲を語る背景について、政府筋は「どんなに厳しくなっても首相は憲法改正を掲げ続けるしかない。ぶれないことが大事だ」と強調。首相の宿願である改憲への姿勢がぶれたと受け止められれば、保守層まで離反し、政権の命取りになりかねないとの考えを示唆した。