政権公約には「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」、そして「女性活躍」「地方創生」などのフレーズが並んでいた。
この総選挙で、自民党は歴史的圧勝を収める。安倍首相は“選挙に負けない総理”として、「大胆な」経済政策の数々を進めてきた。
ところが、である。その「道」の途中で、安倍政権が立ち往生しようとしている。森友・加計学園スキャンダルで支持率は急降下し、確実視されていた来年9月の党総裁選で3選を果たすというシナリオも、もはや現実味はない。
「ポスト安倍の有力候補とみられている岸田文雄・政調会長や石破茂・元幹事長は、格差拡大や大規模金融緩和の長期化への懸念を公然と口にしている。これまでの安倍総理の強引な経済政策は、選挙の強さをテコに反対派を黙らせる力があってこそできたことだったが、もはや神通力は切れた。この政策を続けていく力は残っていない」(自民党非主流派議員)
問題は、安倍政権がすでに前例のない政策の数々を「途中まで」進めてしまったことだ。一連の経済政策には、失敗した時のリスクもあれば、政策遂行に伴って本来必要だったセーフティネット整備もある。あるいは、高支持率だったからこそ美辞麗句で覆い隠せた嘘や誤魔化しもあった。
「一強」政権から、いきなり「死に体」政権に転落したことで、日本社会と経済にかつてない巨大なリスクだけが残されたのだ。
アベノミクスの中心人物たちの存在感もなくなった。内閣参与として経済政策のブレーン役だった元財務官僚の本田悦朗氏は昨年6月に大使としてスイスに赴任してしまい、大胆な金融政策の舵取り役を担ってきた黒田東彦・日銀総裁も「デフレ脱却という目標達成への道筋が全く見えず、来年4月の任期切れで交代する公算が高い」(同前)とみられている。
いってみれば、“難易度の高い手術に挑戦する”と大見得を切ったものの、開腹しきったところで、メスを握る医師たちが意欲を失ってオペ室から去ってしまったような状況だ。
「危険な状態のまま放置された患者」は、もちろん国民である。
確かに、安倍政権は戦後政治の中で、日本経済をカンフル的にある程度の蘇生に寄与した事は否定はしないが、戦後の貧困から中産階級まで発展した日本経済を、時の宰相の名をとったふざけた経済政策「アベノミクス」でホップステップジャンプを狙った時の政権は、未曽有の格差を作ったその責任は大きいと言わねばならない。現状を見るに都会一極集中を加速させ、マニフェストに掲げた地方の再生は置き去りにされたままである。しかし政党のマニフェストは国民に対してはリスクは存在せず、約束違反とはならず、その行政に至っては、官僚・役人は職を辞せばそれで終わりである。つまり損も益も国民が引き継ぐ事になるのである。政権公約違反がいくらかでもあればその最高責任者は国民に責任を取らなければならないのである。