今回の「イスラム国」人質事件に鑑み、も一度国際社会のルールの殿堂の国際連合の役目を考えるべきである

2月1日早朝、後藤さんを殺害したとされる動画がアップされた。まったく酷いテロだ。
■ 捜査本部を早く設置すべきだった
その日の朝のNHK討論では、さすがに各党ともに、ISILを激しく非難していたが、2日からの国会では、各党から政府批判がでてくるだろう。世間からも、なぜ助けられなかったのかという声が出るだろう。
政府の関係者からの話では、危機管理の立場から言えば、昨年に拘束された段階で難しい事案にすでになっており、覚悟せざるを得なかったようだ。もちろん、その後何もしなかったわけではないのはもちろんだ。どのような対応をとったのかわからないが、これから行われる政府内の検証作業に委ねざるを得ない。
ただし、その日に設置された警視庁と千葉県警による合同捜査本部にはやや違和感があった。報道によれば、「人質による強要行為等の処罰に関する法律(人質強要処罰法)」違反という。
どのような法律なのか、役人時代によく使っていた法令検索がインターネットでも利用できるので調べてみた(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S53/S53HO048.html)。
第一条第一項で、「人を逮捕し、又は監禁し、これを人質にして、第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求した者は、六月以上十年以下の懲役に処する。
同条第二項では「第三者に対して義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求するための人質にする目的で、人を逮捕し、又は監禁した者も、前項と同様とする。」とある。
昨年夏、湯川さんがISILに拘束されたという時点ではちょっと無理だが、1月20日に、身代金要求があった段階で既に設置しておくべきだ。実際には捜査は困難であろうが、形式的に政府が動き出したときにやらないといけない。
既に後藤さんらが殺害されてから捜査本部というのもおかしいが、実は、捜査本部を設置するというのは、この事件の本質を表している、このため、もっと早く設置すべきだったのだ。
■ISILの思う壺
というのは、この事件を、しばしば集団的自衛権の問題と絡めて議論する向きが多いからだ。一部の識者は、日本が戦争をしたい国に向かっている、日本は「有志連合」として、安倍首相のテレビ発言を問題視している。
安倍首相は、テレビ討論で、集団的自衛権の法制化について「国民の生命と幸福を保護することが目的だ」とし、「例えば、日本人が危険な状況に置かれた場合、現在は自衛隊はその能力をフルに発揮することができない」と語ったことだ。
要するに、テロに対しては、基本的に自衛隊ではなく、警察の問題だ。つまり、集団的自衛権ではなく、警察権での問題なのだ。だから、もっと早く対策本部を設立して、今回の事件の対応が警察であることが明確になっていれば、集団的自衛権の話と関係ないことが、誰の目にもわかりやすくなったはずだ。ところが、安倍首相の発言と今回の事件がかなり混同されて報道された。
そのため、日本が戦争をしたい国になりたい、日本は「有志連合」に入りたい、とか、まるでISILの主張を代弁しているかのような識者が出てきたのだ。そうした識者は、日本を貶めたいのかも知れないが、政府のつけいる隙を与えてはいけない。そうした隙は、国内のおかしな識者とともに、ISILの思う壺にもはまることになる。
あくまで、今回の事件はテロである。テロは、国際社会では無条件に反対するもので、これまで数多くの国連安保理決議などによって、国際社会で支持を得ている。
最近では、昨年9月、ISILなど過激派に戦闘員として参加する外国人の処罰を加盟国に義務付ける決議案が安保理で全会一致で採択されている。
一方、有志連合は、安保理の枠外だ。ISILへの空爆では、アメリカ、フランス、サウジアラビアアラブ首長国連邦バーレーン、ヨルダン、ベルギー、オランダ、ギリス、デンマークギリシャ、カナダ、オーストラリア等が「有志連合」だ。もちろん、日本は、これらに参加していないし、後方支援を行うわけでもない。
ISILはテロ集団なので、どのようなウソも平気で言う。まったく無関係の日本から、身代金を取りたく、それが出来ないと、実行不可能な要求を突きつけてくる。そんなデタラメを、そのまま日本人が言うべきではないだろう。
■「有志連合」と距離を置くのはリスク
1日の菅官房長官の記者会見では、「有志連合」への後方支援を今後も行わず、今回事件は、「有志連合」への参加や集団的自衛権の話は別としっかり釘を刺してある。
こうした状況になって、今後日本が何を行うべきか。
まず、中東への人道支援は続けることだ。ISILは日本を敵視するだろうが、それでも続けることだ。
次に、同時に「有志連合」とは一戦を画して置くのは当然である。ただし、「有志連合」との連携は続ける。安倍首相がヨルダン国王に謝意を表したのはいい。同盟国との連携を深めるのは、長い目で見れば、テロなどの外敵に勝つ最短コースになる。
「有志連合」の空爆は、確実にISILの弱体化させている。しかも、原油価格の急落は、ISILの自前の資金調達能力を大きく低下させている。昨年の急落前には石油代金で1日当たり200万ドルの収入とされていたが、原油価格の低下と石油施設への空爆で、今やそれは1桁違いより低くなっているかも知れない。
武力行使はカネ食いなので、いくらISILが擬似的な政府機能を持っていても、財政破綻には勝てない。まともな経済力がなく、石油密売と海外からの寄付金で運営しているといわれるが、それが底をついてきたら、もう戦えなくなる。世界が「有志連合」を支援して、ISILを兵糧攻めにするのが、問題解決の近道だ。
日本ではしばしば全方位外交とかの幻想が残っているが、現実社会では、どこかの陣営についたほうが安全保障では安上がりだ。良い悪いは別にして、実際にここに至っては、「有志連合」との距離感をとると、かえってリスクが増す。
第三に、短期的なリスクはます可能性が少なからずあるのは否めない。そのため、君子危うきに近寄らずだ。幸いなことに、日本国内は、ISILのテロのおそれはないわけではないが、欧米に比べれば少ない。ただ、来年のG8サミット、2020年の東京オリンピックのような国際的イベントは要注意だ。海外でビジネスを行う邦人は細心の注意が必要になる。
■「報ステ」のISIL特集を見てびっくり
最後に、マスコミ報道では、いかなる意味でもテロを正当化するようなものはやめるべきだ。筆者は先週、”「報ステ」のISIL特集をみてびっくり 「テロの一面に理解を寄せた」印象だ”(http://www.j-cast.com/2015/01/29226508.html)を書いた。国際的には筆者の反応は当たり前だと思うが、日本ではそうでもない人もいるようだ。
1日の菅官房長官の記者会見でも、記者から、「首相の中東訪問が誤解されたのでは?」という質問があった。記者のウラの質問意図に、「首相の中東訪問が引き金になった」とか「首相の中東訪問に責任がある」というものを正直感じた。おそらく菅官房長官も同じだったのだろう。「テロに対して正当性は全くないじゃないですか。こんな卑劣極まりないテロをやって!」と強く言い放った。
このように、日本政府を悪者にしてはISILの思う壺である。また、ヨルダン政府が、パイロットの生存確認を求めたので、後藤さんが殺害されたという意見も同じように、ISILの思う壺である。そんな報道なら、いっそのことやめてしまえばいい。

これ『ISIL(いわゆる「イスラム国」)の思う壺になる「おかしな識者」「おかしな報道」』と題した2015年2月2日 6時0分現代ビジネスの記事である。

 いつもこのような国際事件が起きる度に私は思う。じゃぁ国際連合は何を諸国に何をしてくれたのだろうかと言う事である。国際連合の役員国である筈の常任理事国等は決議はするが、見ればその効力は100%は無いに等しい、また世界の裁判所である国際司法裁判所も何の権威も無い。こんな組織何の意味も無いと思わざるを得ない。これは設立国である先輩国、あるいは世界大戦での勝利国に気を遣う様ないわばルールにのっとった平等の権利が歪められてる証である。その良い例は、ベトナム戦争であり湾岸戦争であり中東戦争である。今もって旧米ソ冷戦から米ロに変わっただけの綱引き論争、今回のこの事件であっても、国際社会の非道であっても、監理監督する立場の国際連合は何の意見も存在感も発揮できないのが現状である。なのに世界の国々へ拠出金だけは、ベストスリーに入るくらいの負担を強いられてる、こんな理不尽私は無いと言える。飾りだけの組織等無用の長物だ。それだけでは無い。そろそろ米国依存から脱皮するべきと私は思う。さすれば沖縄も悩む必要なしだ。今回の事件はもう一度考える機会を与えてくれたと良い方に考えるべきである。