毎日のように起こる鉄道人身事故に思う 迷惑以外の何物でも無い

ホームの端、虚ろな目でレールを見つめる。
異常に疲れ、何もできない。
先のことを考えると滅入る。いや、暗澹となるだけで考えることすらできない。
逃げたいな…。
力強く駅に近づいてくる列車。その力強さに吸い込まれたら、楽になれるだろうか。
こういう人が本当に列車に吸い込まれると、人身事故の発生である。
残された家族、棄て去ってしまった自分の未来。
困難や絶望も、時間がたてば思い出になったかもしれないが、三途の川は戻れない。
残されたのは家族だけではない。自分の体もそうである。
車両に跳ね飛ばされてしまえば幸運。骨は折れ、手足がグニャリとすることはあるだろうが、それでも美しい姿で葬儀に出れる。
最悪なのは、車両の下に入ってしまった体である。
車輪や車軸に巻き込まれて肉片になってしまう。
内臓が出ると、人間の体というのはとてもくさい。独特なにおいがある。
筆者がこのにおいを知ってしまった後、映画で人が殺されるシーンを見ると、鼻がにおいを思い出して困った。
映画では、ヒーローが格好よく悪人を殺していくが、格好いいはずがない。
道義的なこと以前に、内臓が出ると悪臭が漂うのだ。
話が逸れた。人身事故の現場に戻ろう。
強烈なにおい、周辺に撒き散ってしまった肉片。そして、脂分が付くのか、
変に光る車両。
その中に、長い髪の毛が何本か混じっているのに気づいたとき、仏様が女だったことを知る。
鉄道マンにとっては、常に想定し、人生で何度か体験する事態ではあるが、慣れているような人はいない。
においを吸い込まないように近づき、手袋を使って「救出」を行う。「救出」というのは、死んでいるかどうかは医者が判断するとのことで、鉄道マンが判断することではないからだ。
呼ばれて駆けつける警察は、鉄道よりずっと慣れている。転がっている頭部を頭髪をつかんで「救出」する。
拾い漏れがないか確認し、見つからなければ見つかるまで探すのだ。
肉片になってしまった部分はさすがに集められない。血とともに洗い流されることになる。
軌道上では保線社員が、車両に撒きついたものは車庫で車両担当が行う。
そこへ、においにつられてカラスが集まる。
社員の清掃が終わると、カラスが最後の掃除を行う。
こんな無残な死に方をする人は、現世でどれだけ苦しんだのだろう。
痛ましい限りである。
【遺体は跳ね飛ばせ】
田舎を走る車両は、障害物に出会う可能性が高い。
犬や猫が飛び出すこともあるし、田舎だと狸や鹿も現れる。
踏み切りも多いので、車と衝突するかもしれない。田舎では、道路が鉄路を渡るところに踏み切りのないこともあるので、余計に危ない。
障害物が先頭車の床下に入ると大変である。先頭車の床下は、福知山線で有名になったATS(自動列車停止装置)などがあり、破壊されると回送するのも面倒で、修繕にも時間がかかる。
そのため、車両には前面に「スカート」と呼ばれるガードが備わっている。 
衝撃を吸収するため、割と柔らかい素材でできている。
高架や地下を走る車両には必要ない。動物や自動車に出会うことのないからだ。
しかし、現実には高架や地下を走る車両にも備え付けられていることが多い。飛び込んだ人間を跳ね飛ばすためである。
人身事故用に「スカート」を備える車両。なんともいえない嫌な気分になる。
【見つからない右手】
人身事故の現場でまず確認するのはその人の生死だが、バラバラになっている場合は、全身がそろっているかどうかを確認する。
前回も触れたが、出てくるまで探さなければならない。
鉄道の人間は、運転を再開したくてジリジリするが、全身そろわないと警察の検証が終わらない。
あるとき、どうしても右手が出てこなかった。
「おかしいな…」
鉄道の人間も、運転を再開させるために必死に探したが、出てこない。

これ鉄道会社を退職した人が書いたブログから引用した。この続きは下記ページでご覧いただきたい。「鉄道業界の舞台裏」と題した記事だった。
http://railman.seesaa.net/article/18837387.html

 私は今地方に住んでるが、都会に住んでいる人のブログを見て、国電や私電で大小合わせて毎日のように人身事故が発生して、利用客に多大な迷惑を及ぼしている事を知った。殆どが飛び込み自殺みたいだ。思えば自殺の人は自分の人生を捨て楽をしようとして飛び込むんだろうが、解からない訳は無いが、そのお蔭で「どれだけ第三者に迷惑をかけているのか解かっているのか」と言いたいところだが、その当事者もう無くなっているから、言っても始まらない。悲惨なのは一家心中で、親が死んじゃって、幼児だけが生き残っちゃう事だが、最近は世相を反映して、シングルマザーやシングルファーザーが多いから自殺が増えてて、それが鉄道事故に集中してるらしい。鉄道会社も大変な損害である。だって、その対価の請求先が無いのだから。
 私事で悪いが私もこの拙ブログで紹介した事あるが、私の会社もそのような事故でえらい損害を被った事があった。元々国鉄時代よりJRになっても私の一番のお得意様だった鉄道工事、ある工事(トンネル内の漏水漏れ補修工事だった)の夜間作業(24:00~明け方4:00)の時だった。夜間作業の場合は20,000ボルトの架線を止め、トンネル天井までの足場を組んでの作業だったから、その前後の作業がほとんどを占める。その夜も作業開始まで30分の時に、急に当局より作業中止の指令が入った。関連区間内で人身事故が起きたと言う。年寄のおじいちゃんが飛び込み自殺を図った。私たちは良い機会だ、電車も止まるだろうから、気にせずじっくり工事出来ると踏んだのだが、結果は悪い方だった。その処理のため担当官たちが工事に立ち会えないから中止なのだそうだ。冗談じゃ無い、今までかかった費用出してく入れますかと聞いたら、不可抗力の自己だから、その補償は出せないのだそうである。その時の作業員の賃金や、リースで借りた代金等もろもろはドブに捨てたも同じである。結構かかっていた。正直頭に来てたが、一番頭に来たのは我会社の現場代理人である。この工事の成績給であるボーナスがおぼつかなくなったと言う事でもあったからである。どこにこのウップン向けたらよいのか、本当に腹の立った事故だった訳である。
 話を戻せば我社みたいに事故により被害(東京近郊の国電や私電は終電から始発の間しか工事しないから工事業者の被害は皆無)を被る企業もあるが、一番の被害は利用客であろう。通勤だと仕事に差し支え、その他の人は慶弔時に遅れる。一番ひどいのは親族の危篤等に間に合わない事であり、払い戻しや、それらの金には代えられない苦しみである。もちろん電車に飛び込む人たちは、そんな事考えずにやるんだろうから世話無いと言うべきか。いづれにしてもその被害はそのひと夫々に代え難いのであるし、例え自殺者にどんな事情があろうとも、自分の事の様に考えられず本当に迷惑至極なのである。