旧態依然に陥った自民党に組せず、我が日本国の進路を誤らないためにも若い世代の代表である大学生に望む

 不支持率が4割超、地方選も不調。今回の人事、ひとつ間違えば奈落の底。
 「いや、本当にお疲れさまでした」
 7月23日夜、東京・永田町の首相官邸に隣接した首相公邸。首相・安倍晋三公明党代表山口那津男に声をかけた。
 50年前、公明政治連盟から衣替えして以来、政権中枢を意味する「官邸」は公明党創価学会にとって憧憬の場所である。集団的自衛権の行使容認を巡ってぎくしゃくした公明党をもてなすには、最高の場所だった。
 公明党との調整にあたった自民党メンバーも含めた大人数の会食。しかし、いまひとつ盛り上がらずに約2時間で終わった。安倍の公明党への「気遣い」ばかりが浮かび上がった。
 一昨年末の第2次内閣発足以来、アベノミクスの奏功で「我が世の春」を謳歌し、強気一辺倒で政権を運営してきた安倍が、公明党への気遣いをみせたのは、政権の変調を自ら実感しているからでもあった。
 変調の第一は、安倍が再登板して以来、与野党対決構図となった国政・知事選で初めて敗北した滋賀県知事選だ。官僚出身候補のタマの悪さもあったが、民主党の前衆院議員に1万3000票の僅差で敗れたのは、集団的自衛権に反対の多い創価学会の出足の悪さも影響した。日経平均株価もこのところはさえない動きが続く。だからこそ、落とし穴となりそうな要素は早めに摘んでおく――。これが第1次内閣の失敗で得た安倍の教訓だ。
 もうひとつ、不満のマグマがたまってきた自民党への対策が内閣改造・党役員人事である。しかも、年初来から予想されてきた小幅の改造ではなく、半数以上を入れ替える大幅改造だ。
■“適齢期”未入閣者は50人超
 安倍が公明党を慰労した前後の数日間は、改造人事を意識した動きが相次いだ。
 改造でも留任と目される経済財政担当相・甘利明は7月24日、経団連夏季フォーラムで「内閣改造は9月にも行われるだろう。臨時国会はおそらく10月あたりだ」との見通しを語ってみせた。
 かつての派閥順送りなら、未入閣者の入閣適齢期とされた衆院当選5回以上の議員は自民党で40人を超し、参院当選3回以上は十数人を数える。すでに1年半以上、ひとりの閣僚も変わらない自民党にとっての「異常事態」に、派閥の幹部や、当事者たちの不満と期待は膨らみっ放しだ。
 元財務相額賀福志郎を会長とする平成研究会は7月23日、北海道苫小牧市で親睦ゴルフを催して気勢をあげた。「それぞれの部署、司司で人材を活用し、国の方向を間違えないよう総理に進言したい」と額賀は北海道で見得をきってみせた。額賀派には元少子化担当相・小渕優子が所属しており、女性の活躍を掲げる安倍が改造で小渕を取り込もうとしているのは間違いない。だが、小渕は当選5回、既に閣僚経験があり、年齢も40歳とまだ若い。一昨年、総裁選後に党三役への就任を水面下で打診された小渕は、これ以上のやっかみを買うことを懸念して辞退している。
 裏で策動しているのが元参院議員会長・青木幹雄だ。竹下派経世会が本拠とした東京・平河町砂防会館に、引退後も事務所を持つ青木はなお、資金面を含めて隠然たる影響力を持つ。その青木が期待するのが、険悪な関係が長く続いた元首相・竹下登の後継者、元財務副大臣竹下亘だ。
 青木は、67歳の竹下に「ウチの派閥は優子ではまだ、早い。お前が頑張らんといかん」と発破をかける。小渕と竹下は政略的にも平成研の要となっており、額賀派は実質的に「竹下・小渕派」の様相を呈している。
 もう1人、内閣改造・党役員人事で焦点となっている自民党幹事長・石破茂も、もとはといえば平成研に属していた。6年前、青木の反対を押し切って総裁選に出馬し、その後派閥から脱藩した石破にも、青木はアプローチをかける。「安倍の思い通りにはさせん」。80歳になった青木の執念は亘、石破との恩讐を超え、旧竹下派の結集に向かう。
 当の石破は「安倍支持」を変えていない。7月初め、都内のホテルで側近たちとの会合を持った石破は、「早く幹事長をやめて次に備えればどうか」と水を向けられると「それができればいいのだが。なかなか、そうもいかないのだ」と答えた。
 安倍と石破の関係がしっくりいっていないのは周知の事実。安倍は石破の人事については「考えている」と周辺に漏らすだけで、言質は与えない。
 安倍は集団的自衛権に関する公明党との調整からは石破を外した。安倍が山口と夕食をともにした翌日の7月24日、石破は首相官邸で安倍と約1時間会談したが、これとて定例の協議であり、石破は「改造に際しては副大臣政務官の役職希望を聞きとり、準備します」と報告。安倍は新設する安全保障担当相の重要性を力説したという。
 安保相への就任を、周辺は「閣内への封じ込めだ。受けるべきでない」と止めるが、石破は「分かっていてもやらねばならぬことがある。集団的自衛権の法整備は私にしかできない」と応じている。
 安保相になれば、来年夏までかかる通常国会の審議、答弁に忙殺され、秋の総裁選への出馬も危うい。元防衛相・浜田靖一らは「閣僚も幹事長も引き受けず、無役になって戦うべきだ」と主戦論を説くが、石破は心を動かさない。浜田や若手の間には「このままではダメだ」と失望する空気も広がってきた。青木の考える「経世会再結集」は時代錯誤に終わるのか。
 幹事長が交代する場合、候補は誰か。今度の幹事長は、来年秋の総裁選前後と目される衆院解散・総選挙の指揮を執る重大な役目を担う。
「やがては幹事長に」と心中、期するところのある官房長官菅義偉は、官僚掌握、政策調整の意味からも閣内に置いておく必要があるうえ、官房長官と幹事長を一気に経験すれば、竹下登や元首相・小渕恵三のように、総裁候補になるまでに力をつける可能性さえある。
 そこで候補となるのは小渕のように「華はあるが、軽量」で安心できるタイプか、総理・総裁は狙わないベテラン議員となる。後者なら衆院予算委員長・二階俊博や党選対委員長・河村建夫らもあがってくる。
 安倍が「古い自民党の象徴だ」とみる青木や元幹事長・古賀誠と気脈を通じつつ、党総務会長・野田聖子の後見役を務める二階は対中国、韓国外交では安倍と対立。「東京五輪招致の努力の半分でも、中国と韓国に振り向けるべきだ」と皮肉を飛ばしてみせた。半面、予算委員長として安倍が臨んだ国会審議をずいぶんと助け、予算をスピード成立させた。二階は国会議員の秘書から身を起こし、田中派から元民主党代表・小沢一郎と行動を共にし、さらに保守党へと転じ、元首相・小泉純一郎とも誼(よしみ)を通じるなど変幻自在の動きをみせてきた。安倍周辺は「二階はもっとも警戒すべき政治家だ」と断じながらも、砂防会館にいる不満分子の青木、古賀らと二階を分断する効果が見込めるとも仄めかす。
 ベテランなら前副総裁・大島理森という手もある。
 公明党とのパイプを保持し、集団的自衛権の調整で副代表・北側一雄自民党副総裁・高村正彦に引き合わせたのは、大島だった。安倍から「公明党と調整してほしい。おそらく、相手は北側さんだろう」と指示された高村が党本部の“大島部屋”を訪れて「手伝ってほしい」と要請、それを意気に感じての計らいだった。しかも大島の公明党パイプは北側、国対委員長・漆原良夫らにとどまらず深く、広い。
 6月中旬、衆院議長・伊吹文明公明党幹事長・井上義久、元書記長・市川雄一らを議長公邸へ招いた席に、大島もいた。伊吹と大島は公明党側に「これからも色々な話は、公明党と相談、協力してやっていきますから」と語りかけている。集団的自衛権の協議では関西の公明党・学会を代表する北側の陰に隠れて存在感の薄かった井上だが、関東の勢力をバックにしたナンバーツーであることは間違いない。4年前、常任顧問に復帰した市川はいまも週1回、党幹部が集まる中央幹事会に出席し、睨みをきかせている。名誉会長・池田大作の健康問題があり、東西対立が囁かれる創価学会との関係を考えれば、東とも西とも良好なパイプを持つ大島の動きは侮れないのだ。
■安倍シンパ女性議員も有力
 有力閣僚も相次いで閣外に去る公算が大きい。前回総裁選で争った後、閣内で処遇した環境相石原伸晃、農相・林芳正、さらに前総裁の立場で閣内に入れた法相・谷垣禎一ら、主要閣僚では経産相茂木敏充も交代が濃厚だ。留任とみられる菅、甘利、副総理兼財務相麻生太郎を除く重要閣僚に、待機組の期待はいやが上にも高まる。海を越えてまで、入閣への宣伝を怠らない議員もいる。
「何としても、まとめて帰る」
 7月15日、ワシントンDC中心部の米通商代表部(USTR)の会議室でこう声をあげたのは自民党の環太平洋経済連携協定(TPP)対策委員長・西川公也だ。衆院当選5回、71歳になる西川は農林族から「裏切り者」と罵声を浴びせられながらTPP交渉の推進へ動いた。「初入閣」への執念だった。
 そして「女性」。安倍は「社会の指導的地位に占める女性の割合を2020年までに3割にする」と成長戦略にうたった。18人の閣僚のうち、3割なら6人になる。安倍が官房副長官として仕えた小泉は最初の組閣で5人の女性を起用した。次の改造では最有力の小渕のほか、党参院政審会長・山谷えり子や党厚生労働部会長・丸川珠代らの安倍シンパ、党政調会長高市早苗、さらに有村治子らの名前が飛び交う。「首相は少なくとも小泉内閣での5人を狙っている。適齢期で足りなければ、当選1回女性議員の抜擢もあり得る」とまで、政権中枢ではささやかれるのだ。こうした情勢に、旧勢力の派閥も黙ってはいられない。
 難局は改造後に訪れる。改造人事が政権の分水嶺になった例は、これまでにもあった。
 たとえば、官房長官の菅が師と仰ぐ元自民党幹事長・梶山静六官房長官を退いた橋本龍太郎政権がそうだった。梶山の退任と同時に、ロッキード事件に関係した佐藤孝行総務庁長官に起用した橋本は世論の強い批判を浴び、この改造から1年もたたずに退陣に追い込まれた。ひとつ間違えば奈落の底に転落するのが、人事なのだ。
 折しも内政では10月の福島県知事選、11月の沖縄県知事選と自民党が候補選定に手間取る首長選が続き、12月には消費税再引き上げの決断が迫る。北朝鮮の日本人拉致問題は夏の終わりから秋の初めに北朝鮮側の調査結果が出て、安倍は訪朝するか否かの決断を迫られる。これを米国は警戒し、安倍が「最もケミストリーのあう首脳」と評するロシア大統領・プーチンはマレーシア航空機撃墜事件で国際的に窮地に立つ。安倍を取り巻く情勢は内外ともに厳しく、針の穴を通すように細心な政権運営が必要なのだ。
 冒頭にあげた公明党との公邸の会食は、その細心な例の1つだ。常々、周辺に「最初の内閣は大きな挫折、大きな勝負をしないままだった。今度は勝負した自信と慎重さの両方がある」と漏らす安倍は、来年秋の自民党総裁選と、前後の衆院解散を見据えて「自信と慎重」硬軟両様の政権運営を心掛けてきた。
 だが内閣の不支持率が4割を超える世論調査結果も出てきた。今度の改造人事が安倍にとって、長期政権か否かの大きなヤマ場になる。

これ「改造人事は「長期政権」への分水嶺」と題した文藝春秋 8月11日(月)10時41分の配信記事である。

 正に時計の針の逆戻りだ。失敗に終わった政権交代の1cmもの前進はなんだったのか。旧態依然の自民党に逆戻りである。第1次安倍内閣の教訓も置き去りだ。派閥解消の掛け声も選挙時の甘言だ。やはり自民党は変わってはいない。少なくとも55年体制より半世紀以上過ぎたにも拘らずにこれである。随分と国民もなめられたものである。だからこそ安倍首相は好き勝手ができるのだろう。有権者は余りにも無知であるし、政治に疎い。これでは政権党自民党とグルになって、好き勝手し放題のマスコミとは闘えない。やはり政治に関心を持ち、自分なりの考えを持って対峙出来得る精神を養わなければ、米・中・韓および環太平洋のとのやり取りさえも解らず、今後の日本の進路さえ決めれない藻屑と化してしまう。それだけは避けねばならないのである。そのためにも、若い世代の代表である現在の大学生の率先したやる気を見たいものである。