日本企業に賃上げの気運 何の事無い企業が都合悪く感じて来たからでしょうか

 【東京】トヨタ自動車をはじめとする日本の大手製造業者が久々に賃上げの構えをみせている。賃上げは安倍晋三首相が長きにわたって企業に強く呼び掛けてきたものであり、同首相の日本経済復活に向けた戦略で重要な部分を占める。
 日本の賃金は1990年代後半から下がり続け、デフレ長期化を後押しした。エコノミストらは、賃金は上がらないという心理的なハードルを取り除くことが景気楽観論を惹起し、その結果、景気回復の地歩を固められると話している。
 大手企業は19日、毎年春に行われる労使交渉(春闘)をスタートした。労働組合は2008年の世界的な金融危機以降初となる賃上げを要求しているが、決して月(不可能なこと)を求めているのではない。いわゆる基本給について平均で1%の改善を要求しているだけだ。これは賞与やその他の特別手当を除外した給与だ。
 春闘は、1950年代から続く伝統で、大手企業が先陣を切り、残りの日本企業の賃金の方向性を決める。今年の春闘には期待が集まっている。安倍首相が財界に、手元資金を切り崩して賃金を引き上げるよう圧力をかけたからだ。4月に消費増税を控えているため、この動きは特に緊急性を帯びた。消費増税個人消費を落ち込ませ、経済成長を鈍らせる恐れがあるからだ。
 安倍首相の口出しは功を奏しているようにみえる。
 電機大手、東芝の久保誠副社長は、好循環に貢献できるかを検討すると述べた。同社の労組は月4000円の賃金改善を要求している。
 トヨタの宮崎直樹専務役員は19日、記者団に対し、「日本経済との関わりのウエートが高まっている」とし、トヨタが判断を下す際、それを無視することはないだろうと述べたが、現段階ではまだ何も決まっていないと釘を刺した。
 賃上げが実現すれば、それは既に実施されているその他の経済復活計画に続く動きになる。消費者物価は何年ぶりかのペースで上昇しているほか、失業率は3.7%と、過去6年で最も低くなっている。
 これに加え、安倍首相の成長戦略である「アベノミクス」、つまり果敢な金融緩和と財政政策の組み合わせは、為替相場が12年末の首相就任以降、20%近く円安に動く一助となった。これにより、メーカー、とりわけ自動車メーカーが海外で上げた利益は大幅に膨らんだ。
 トヨタ日立製作所三菱自動車など幾つかの日本企業は今年度(2014年3月期)に過去最高の利益を計上するとみられている。
 労組にとって、これはほこりを被っていた交渉スキルを再度生かすチャンスであることを意味する。
 トヨタ最大の労組は先週、月4000円(1.15%)の基本給引き上げを要求した。日産とホンダの労組は月3500円(0.96%)の賃金改善を求めた。
 三菱自動車の労組も月3500円の改善を要求。実現すれば、同社の賃上げは14年ぶりとなる。同社の業績は2000年代半ばのリコール隠し問題以降、低迷していた。
 ホンダ、三菱自、それに日立の経営陣も、政府の賃上げ要求について検討すると述べている。日立の御手洗尚樹常務は基本給の引き上げが従業員に報いる「選択肢の一つ」だと話す。
 労組はまた、賞与の増額も求めている。年間の賞与は1年分の年俸の半分以上を占める場合が多い。多くの日本企業は08年の金融危機以降に賞与を削減してきた。
 日本企業は1990年代終盤以降、果敢にコストを削減して世界との厳しい競争に耐え、長引く国内経済の低迷を乗り切ってきた。
 日本の労組は雇用を守るために賃金カットを容認してきた。日本政府のデータによると、日本の名目ベースの賃金は1997年から2012年の間に平均で年1.1%低下した。ちなみに米国の賃金は同時期に3.8%、ユーロ圏は2.5%上昇している。
 この結果生じた消費者の購買力低下は内需を衰えさせ、日本経済を深いデフレに追いやった。これが賃金をさらに低下させ、負の連鎖を加速させた。
 企業幹部は、給与増が景気の勢いを維持する上で重要な役割を担っていることを認識しているものの、賃上げが既に高い日本の労働コストを引き上げ、世界市場における日本の競争力を奪いかねないとも警告している。
 日本政府が出資する国際協力銀行JBIC)によると、日本の製造業は過去10年間で雇用を海外に移しており、海外で生産した製品の比率は03年の約25%から3分の1(約33%)にまで上がっている。
 フルタイム従業員の賃上げが、パートタイム従業員、派遣社員契約社員の賃上げにつながるかどうかは分からない。このような従業員が全体に占める割合は昨年末の時点で37.5%と、20年前の2倍近くにまで増えている。日本企業では労働コストが安いだけでなく、不況時に解雇もしやすい派遣社員を増やす傾向が強まっているからだ。
 

これ「日本企業に賃上げの気運 」と題したTHE WALL STREET JOURNAL 2月 20日 10:15 の報道記事である。
 

 何の事無い企業が都合悪くなって感じて来たからでしょう。