東京都知事選投開票が1週間後に迫った2日、安倍晋三首相(自民党総裁)は知事選に立候補している舛添要一元厚生労働相の応援のため、銀座で初の街頭演説を行った。公明党の山口那津男代表もともに登壇し、与党の全面支援をアピール。最近の地方選では両党の隙間風もあって与党の取りこぼしが目立つだけに、都知事選を機に強固な連携を取り戻す狙いもあったようだ。
山口氏は開口一番、首相とともに立った街宣車の上で、こう訴えた。第2次安倍政権発足後、与党党首の街頭でのそろい踏みは初めて。円満な関係をアピールしたかったようだが、山口氏は約8分の演説で一度も首相の名を挙げなかった。
続いて演説した首相も、つれなかった。約11分30秒の演説で公明党に言及したのは「自民、公明、連立与党全力で舛添さんを応援をしています」だけだった。
首相からも山口氏の名前は出ず、2人だけで手を握って聴衆にアピールすることもなかった。
ぎこちない両氏の背景には、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古への移設が焦点となった1月の名護市長選がある。公明党は自主投票で臨み、自民党が支援した移設推進派の新人を支援しなかった。足並みの乱れが「移設反対派の現職が再選する一因となった」(自民党幹部)とみられている。
昨年10月の川崎市、同11月の福島市の各市長選では両党が支援した候補が落選するなど、ただでさえ与党は地方選の敗戦が目立つ。12月までに行われる沖縄県知事選は、普天間飛行場の移設を推進する上で、負けられない選挙。与党党首のそろい踏みには、優勢が伝えられる都知事選を亀裂修復のきっかけにしようという意図も透けてみえる。
「首相と私の間にはちょっと隙間があるけれど、風は吹いていない」
山口氏が隙間の存在を認めたように、外交や安全保障、教育などの重要課題で深まる両党の溝は埋めがたいようだ。