日銀の黒田東彦総裁が就任して20日で5カ月。デフレ脱却を目指し「2年で2%物価上昇」を目標に4月から始めた量的・質的金融緩和(異次元緩和)策は、円高是正や株価回復につながり、個人消費や企業業績を改善させた。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の中核を担う「黒田緩和」の滑り出しは上々と言えるが、来年4月に消費増税が予定される中、景気の持続的な回復に向けて、企業の設備投資拡大や賃金上昇をどう実現するかなど課題も多い。
黒田緩和は、日銀が市場を通じて金融機関から長期国債など資産を大量に買い入れて、世の中に出回るお金の量を2年で2倍に増やすことが柱だ。ジャブジャブの資金供給でモノやサービスに対するお金の価値が下がり、物価が上昇に転じてデフレから脱却するシナリオを描く。黒田総裁は緩和策導入を決めた4月4日の記者会見で「物価が将来2%程度上がるとの期待が広がれば(企業や家計は上昇前にお金を使おうとするため)設備投資や住宅投資が増え、経済が拡大する」と狙いを説明した。
緩和発表後、金融市場では円安、株高が進行。株高で懐が潤った富裕層らは宝飾品など高額商品や自動車などの購入を活発化した。8月12日に発表された今年4~6月期の実質国内総生産(GDP)で個人消費が前期比0.8%増と好調だった背景には、株高の資産効果が反映されている。また、円安を追い風に輸出も同3%増と伸び、企業業績を押し上げている。政府内では「消費先導の極めて良いパターンで景気回復が進んでいる」(甘利明経済再生担当相)と評価は高い。
15年にわたり下落傾向が続いた物価も上昇に転じている。6月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は14カ月ぶりにプラス圏に浮上。円安でエネルギーの輸入価格が上がり、電気代などが上昇している影響が大きいが、政府は8月の月例経済報告で「デフレ状況ではなくなりつつある」と物価判断を上方修正。黒田総裁は20日の毎日新聞とのインタビューで「(緩和効果などで)基本的に良い方向になっている」と自賛してみせた。
ただ、脱デフレと景気の持続的な回復のカギを握る設備投資拡大や賃金上昇の道筋はまだはっきりしない。毎月勤労統計によると、基本給にあたる所定内給与は6月まで13カ月連続で前年比マイナス。また、設備投資は4~6月期も依然マイナスのままだ。国民の大多数を占める中間層の賃金が上がらず、財布のヒモが固いままでは個人消費はいずれ失速する。企業が国内の設備増強や雇用拡大に慎重なままでは力強い景気回復は望めない。
日銀による国債の大量購入には「中央銀行による国の借金の穴埋め」との疑念もつきまとう。増税先送りなど国の財政再建姿勢が緩めば、国債が売られて長期金利が急騰するリスクがある。黒田総裁は「増税先送りは金融緩和の効果をそぐ」と語り、政府に決断を求めている。【工藤昭久】
これ「<黒田緩和5カ月>持続的回復道半ば 課題は設備投資・賃金」とした毎日新聞 8月21日(水)0時44分配信 の記事である。
この記事のように黒田緩和は、単純に、本当の意味のデフレ脱却へのカンフルの役目は果たしたと評価して良いと私は思う。そもそもデフレ不況の最大の原因は何の事無い、金の価値を見直したが、前進しないで、国民の感覚が現状でも良いのではと言う感覚が蔓延した結果の状態だったと私は思っている。それに対しての政府と識者のつまり「アベノミクス」の仕掛け者の意識ショックは絶大だったと私は思っている。実益の無いカンフルそのものだったと言って良いと思う。でも悲しいかなマーケットはそれを理解してくれなかった。それが今回の「アベノミクス」の実態と言って良い。それを仕組んだ政府当局者の最大の誤算は、綿密な計算通りに行く筈だった賃金の上昇が起きなかった事にある。マーケットを甘く見た事にある。何故なら「アベノミクス」そのものがマーケット原理を逸脱した政府筋の強制ベクトルの強権だったからである。しかし、企業は賢い。賢いと言うよりズルイと言った方が良いのかも知れない。今までの政治と企業は「持ちつ持たれつ」の関係であったが、江戸・明治の武家よろしく、旦那様の影を踏まないお内儀のような関係で来た。もちろん旦那は政治である。がその虐げられた、企業はそう簡単には政治の言う事等聞かない。この際今までの借りを返してもらう、と言うような気持ちが取れない筈である。だからこそそう簡単には賃金は上げない筈である。だからこそ私はこの「アベノミクス」の政策で簡単にはベースのアップは無いと断言して来た意味はここにあるのである。何時の日もどんな時にも、企業は政治の言う事を聞いて来た。だからこそそう簡単にはベースのアップには応じられないのである。これが真相と言って良いと私は断言出来る。結果的には、このまま行けばベースアップは成されるとは思うが、それは度重なる政治の要請と依頼を企業が上げなければ都合が悪いと感じた時でしか無い。それが真相と言って良いと私は断言出来る。要するに政治の側はそこまで考えていないから楽観的な見通ししか立てれなかったのである。