今後の政局の行方 大好きな政治作家大下英治さん語る!

参院選さなかの銃撃事件で死去した安倍晋三元首相(享年67)の国葬が終わり、永田町は動乱期に突入した。国葬や旧統一教会問題への対応で、岸田政権の支持率は下降の一途。10月から東京スポーツ紙上で新連載「死してなお 昼将軍 安倍晋三」で健筆を振るう作家の大下英治氏(78)に混迷する政局の行方を聞いた。

 

――27日に国論を二分した国葬が終わった

 

大下氏:国葬になったことで、大騒ぎになって、安倍さんが少しかわいそうな気がした。ただ、亡くなった直後は日本中が悲しみに暮れ、自民党本部にも多くの人が献花に訪れた。岸田首相はそれを見て、国葬を行えば大きな力になると思った。物事を早く決められない人が即断したが、手順が乱暴やら旧統一教会の問題が出て、読み間違えた。

 

――支持率が下げ止まらない

 

大下氏:岸田首相は党内の最大実力者である安倍さんに押し切られる構図で、国民からはそれでも耐えて、頑張っているように見えたのが逆に良かった。実は当選同期である安倍さんと岸田首相は裏で手をつないでいた。本来なら安倍さんが亡くなって、岸田首相は自分のやりたいようにできるとも思えたが、清和会を敵に回せば、数で劣る岸田首相の宏池会は苦しくなる。安倍さんを支える岩盤支持層や清和会を取り込むために国葬を決めたこともある。

 

――岸田政権は持つのか

 

大下氏:旧統一教会の問題で、岸田首相も茂木敏充幹事長も、じきに収まると甘く見ていた。国葬についても個人的な思いを熱っぽく話せば、ここまで反対の世論は出なかった。岸田首相は聞く耳を持つと言いながら、独断で信用できない人のイメージがついたのは厳しい。いくら新しい政策を打ち出しても国民が信用できないとなる。支持率を上げる材料も少ないなかで、岸田首相の粘りが見物。

 

――党内で主導権争いが起きるのか

 

大下氏:二階俊博元幹事長、森山裕選対委員長、菅義偉元首相が河野太郎デジタル相を担ぐ流れになってくる。平時で乱を起こしたら裏切り者になるが、岸田政権が崩れ始めた時に乱を起こすのは、立て直しの大義名分が立つ。選挙は3年のうちだが、総裁選は2年後。来年は統一地方選で、岸田首相は苦しくなって解散を仕掛けるかもしれないが、良いチャンスがあるかどうか。その時には清和会が一枚岩なのか分裂するのかで一波乱ある。逆にいうとそれだけ安倍さんという人の存在がいかに大きかったかとなる。

 

――安倍氏を「昼将軍」と名付けた

 

大下氏:党の実力者といわれる二階さんや麻生太郎副総裁に比べて、安倍さんは一回り以上も若かった。もし67歳の安倍さんが生きていれば、十数年、20年近くの黄金期が待っていた。田中角栄元首相はロッキード事件で表に出られない「闇将軍」だったが、安倍さんは堂々と表に出て、周囲から待望されての3度目の首相返り咲きもあった。安倍さんが亡くなって、混乱が起き、死してなお、永田町で一番大きな存在として生きている。だから「令和の妖怪」とも命名したんです。

 

――政局のキーマンはいまなお安倍氏

 

大下氏:もう一つ、安倍さんのルーツである長州藩との絡みもある。父親の晋太郎も「晋」の字が入っているように長州の人は「高杉晋作のごとく生きろ」と教えられた。その原型は吉田松陰で、安政の大獄で生き延びていたら明治維新はなかった。死んで、神になったことで、弟子たちは松陰の「狂いたまえ」の言葉に従い、維新を起こした。生前、安倍さんに「根っからの長州人ですね」と尋ねたら「見栄っ張りで、意地っ張り。長州人の血ですよ」と笑って答えていた。その意味で、安倍さんは吉田松陰的存在となるのか。流れをくむ人たちに何人の“高杉晋作”がいるのかも見物ではある。

 

大下英治(おおした・えいじ) 1944年6月7日、広島県生まれ。「週刊文春」の記者を経て、ノンフィクション作家となる。デビュー以来、政財界、芸能、犯罪、スポーツ、社会問題などの幅広いジャンルで創作活動を続け、著書は450冊以上に上る。近著に「石原慎太郎伝」(エムディエヌ)、「西武王国の興亡 堤義明最後の告白」(さくら舎)がある。広島東洋カープの熱烈なファンとしても知られている。

 

 

これ『安倍晋三元首相が「吉田松陰」になる日 大下英治氏が大混迷の政局を解説』と題した東スポWEB 2022/09/30 11:45の記事である。

 

 

成る程確かに大下さんの言うとおりである。流石政治作家だ!