参議院広島選挙区の1億5000万円支給問題の責任を認めた二階幹事長 根底は安倍再登板か?

1億5000万円の支出に関与したのは「安倍と自分」「責任は(安倍)総裁と私(幹事長)にある」

 

二階俊博幹事長がいきなりこう語った瞬間、記者団に緊迫した空気が漂った。5月24日、これまで否定してきた「広島買収1億5000万円問題」について当時の首相・安倍晋三の責任を認めたのだ。政権の屋台骨がきしみ始めた瞬間だった。菅義偉首相を支える二階が、ついに安倍の封じ込めに動いた。いわば「捨て身」の作戦だ。

 

河井案里参議院議員は、2019年に行われた選挙で、1億5000万円という潤沢な選挙資金を自民党から提供されて議席を獲得した。広島の地で、大規模でなりふり構わぬ「買収」が行われたのだ。2020年3月、公職選挙法違反で摘発。6月逮捕。河井案里は失職し、選挙運動を仕切った安倍晋三前首相の側近・河井克行前法相は罪を認め議員辞職した。安倍前首相の肝入りだった河井案里の選挙は、買収戦だったことが明らかになった。

 

今年4月25日、再選挙となった広島は、3月に広島県連会長になったばかりの岸田文雄政調会長が失地挽回の陣頭指揮に立った。しかし最後まで「自民政治と金」のイメージを払拭することができず敗北。尻拭いをさせられた岸田は、この結果を踏まえ、1億5000万円の詳細を二階幹事長に説明を求めることとなったのである。

 

この件に関して二階は、こう言った。

 

「党全般の責任は(幹事長である)私にあるのは当然だが、個別の選挙戦略や支援方針はそれぞれの担当で行っている」

 

そして、二階幹事長の背後にいた林幹雄幹事長代理が唐突に質問を引き取り、

 

「選挙資金は選対委員長が担当だった」

 

と言い放ったのである。

 

「1ミクロンも関与していない」甘利の薄笑い

当時の選対委員長・甘利明税制調査会長は、薄笑いを浮かべてこう言った。

 

「(自分は)1ミリも関与していない。もっと言うなら、1ミクロンも関与していない」

 

小学生か?といったら、小学生に失礼だろう。そしてさらに、痛いところをつかれたくない林幹事長代理がキレる。

 

「党のことを根掘り葉掘り聞かないでほしい」

 

党のこと、政権が選挙のときに行った不正、有権者への不実を「聞かない」という選択肢は、メディアにはない。この発言は、国民のみならず、身内の自民党広島県連からも「無責任で情けない」「これほど侮辱した言葉はない」と、猛反発をくらった。

 

二階の「死なばもろとも」で次々噴出する安倍政権の暗部

衆院の任期満了が迫るなか、このままでは選挙に勝てないと慌てた二階がいきなり発言を翻したのが、冒頭の「1億5000万は総裁と私が」である。

 

「河井スキャンダルの責任を二階さんに押しつけるのであれば、死なばもろとも、差し違える覚悟で安倍前首相を引きずり出したんですよ。そうすれば、細田派、麻生派、岸田派から竹下派までを黙らせることができるからです」(閣僚)

 

自らの政治生命をかけた勝負に出た二階。自民党長老議員が言う。

 

半導体議連で、A(安倍)A(麻生)A(甘利)がそろい踏みしたときから不穏だった。二階は欠席し、『売られた喧嘩は買う』と漏らしていたんだ」

 

そればかりではない「安倍vs.二階」には古くからの因縁があったと続ける。

 

「安倍政権最盛期、安倍首相は二階派加藤勝信官房長官に継承させてはどうかと打診した。安倍からすれば、高齢の二階に議員辞職を促し、党の実効支配を細田派か麻生派にして、安倍帝国を完成させようとしたんだな。かつて小泉元首相が中曽根、宮沢元首相に定年辞職を促したことと似ているけど、『自民党をぶっ壊す』といった小泉元首相と違い、安倍は自分の権力の完全掌握を計った。目的がぜんぜん違う。それ以来、二階と安倍は敵対している。

 

今、二階は、幹事長であり続けなければ政治生命を絶たれる存在ともいえる」(同)

 

新しい議連や各地の講演で存在感を強める安倍。一方、菅政権の後見人である二階は、コロナ対応と発信力不足で内閣支持率が急落するなか、断崖絶壁なのである。

 

ポスト菅に「小池」で、安倍封じを画策

多勢に無勢の二階幹事長に勝機はあるのだろうか。

 

「二階幹事長が菅首相にプッシュしたのが、困窮世帯への30万円給付。緊急事態の延長とセットで決定する。逆風の総選挙を最小限のリスクにとどめつつ、その後はポスト菅のサプライズ人事として、小池百合子都知事を担ぐ可能性も」

 

そう言うのは麻生太郎副総理に近い自民党幹部だ。わかっているだけで4月20日、5月11日と続いた「二階-小池会談」はただ事ではない。

 

東京など人口集中地域にワクチン接種を優先してほしいという小池知事に、二階幹事長は、

 

「感染拡大が続いている東京を抑えるというのは良い考え方だ。日本全体にとってもいいのではないか。だから、五輪中止などということは言わないようにお願いしますよ、ね、知事」

 

そう言いながら、小池知事の顔をのぞき込んだという。

 

二階は自民の実効支配を持続するために、昨年の都知事選挙で366万票超を獲得した「日本一の女性政治家」カードが必要なのである。一方、小池は都議会選挙とその後の政治展望において二階幹事長を怒らせたくない。2人に共通しているのは、安倍を封じなければ主導権は得られないという事実だ。

 

「とにかく安倍を黙らせろ」。これがまず「菅-二階」のミッションだろう。しかし国民にとっては、もし安倍が健康を取り戻したのであれば「やるべきこと」は政権取りではない。放り出した疑惑の数々を、まずは説明するべきだろう。国民はそれを、忘れてはいないのだ。

 

(文中敬称略)

 

取材・文:岩城周太郎

 

 

これ『捨て身の安倍封じに打って出た二階幹事長の「最後の切り札」』と題したFRIDAYデジタル2021年5月28日 10時0分の記事である。

 

 

内閣支持率がだだ下がるなか「安倍晋三再々登板か」という声が聞こえ始めた。数々の疑惑を放り出して体調不良を理由に辞任した前首相がなぜ…?

 

この、まさかの「安倍待望論」の出所を探ってみると、じつはすべてが「安倍自身の仕掛け」だった。わざわざテレビに出演して菅首相を支持してはいる。が、よく聞くと、憲法改正に言及しないうえ、あっけなく「赤木ファイル」の存在を認めた菅を、安倍氏は相当不満に思っているようだ。

 

菅首相の足らざるを指摘するように、「半導体議連」最高顧問、「原発リプレース議連」顧問などに就任し、ますます政治活動を活発化させているのは、菅首相に対する「これではダメだ」というメッセージと見える。

 

「安倍前首相の懐刀である、今井尚哉・内閣官房参与が『いまは黙って待つしかない』と漏らしているそうです。これは安倍前首相の内意を受けた発言と捉えられています」(官邸スタッフ)

 

党内からは「選挙のためには」の焦燥が

5月の連休明けに「自民党議員による、自民党議員のための、自民党議員の首相は、誰が望ましいか?」という質問を、自民党議員・有力党員14人にぶつけてみた。

 

1位は、安倍晋三・前総理大臣。ダントツの9票を獲得し、支持率にすると、なんと64%を超えている。

 

次点は河野太郎規制改革担当相に「2票」、支持率14%。

 

3位以降は団子状態で「とりあえず名前を出しておくか」程度の熱量しか感じられないが、石破茂小泉進次郎環境相岸田文雄政調会長に各「1票」。支持率はそれぞれ7%。

 

昨年9月に、汚名にまみれて辞職したばかりの安倍前首相人気が、党内でも衰えていないというか、復活しつつある。

 

その理由は、いうまでもなく選挙。衆院任期満了まであと4ヶ月、選挙が間近に迫ってきたからだ。菅義偉内閣の支持率は30%台に下落。コロナ禍で地元に帰りづらいという事情もあり、焦燥感は募るばかり。「なにか別の手を」と藁(わら)をも掴む思いなのだろう。

 

とくに、自民党の組織票と創価学会の応援票を受け、5000~8000票の僅差で当選してきた議員にとってはなおさらだ。

 

「コロナ対応が遅く、ワクチン接種も進まず、支持率が下がる一方の菅政権のままで総選挙に突入したくない」(自民党議員)

 

という。まあ、そうだろう。

 

だからといって「安倍前首相!カムバック!」とは····政権放り出し時の疑惑を考えれば現実的な人事とは思えないのだが。

 

「やっぱり、アベノミクスの再起動が必要なんじゃないかなと。『1億総活躍時代』という掛け声、トランプ大統領との関係構築。安倍さんは政治的なアピールが上手かった。それに比べて、菅首相からは、フレッシュな言葉が聞こえてこないから」(細田派議員)

 

富裕層だけが恩恵を受けた「アベノミクス」は、実体はないもののプラスの印象だけがうっすら残った。

 

「元気を取り戻した」なら、疑惑の解明も

陽の安倍、陰の菅というイメージは、もはや「安倍教」の観さえある。こうなると、安倍の「再々登板」も、本当に起こるのではないかと考える自民党議員が出てくるのだから不思議だ。極めつけはこうだ。

 

「安倍さんは元気を取り戻した。政権を担っていただければ、民主党政権から自民党政権に戻った時と同じように、株価はたちどころに跳ね上がるだろう。日経平均は3万円を超えて3万5000円に到達するかもしれない。安倍さんにはそういうムードを醸し出すオーラがあるんだ」(麻生派議員)

 

「オーラ」がある。そこに「実体」はない。何度でもいう。株価が上がって恩恵を受けたのは富裕層だ。

 

総理通算在職日数3188日。憲政史上最長記録を更新するに至ったのは、安倍前首相の選挙上手がある。

 

民主党から政権を奪い返した2012年から2019年までに実施された衆参3回ずつの国政選挙は、いずれも自民大勝または現有議席を維持した。

 

国民を騒然とさせた安保法制改正、情報を制限する特定秘密保護法、官僚を統御した公務員法改正など、世論からは「悪政」と指弾されたなかで政権を維持してきた安倍前首相の「選挙戦略」に自民党は依存している、といっても過言ではなかろう。

 

直近の安倍前首相の発言である。

 

「命をかけて国を守る自衛隊の諸君を憲法にしっかり明記することは私の仕事だと思っている」

 

憲法改正の持論を展開した安倍は、一部支持者から喝采を浴びた。日本版CIAと言われる「情報局」を内閣に新設すべきだというアドバルーンもあげている。二度あることは三度あるとばかりに、安倍前首相の3回目の政権取りがまことしやかに流れていることは事実だ。

 

実体のない期待感にうっすら覆われていく

そもそもの「待望論」の出所は本人だが、その「掛け声」に釣られるように、党内でもじわじわと「再々登板」の可能性が囁かれ、その報道からうっすらと「次は安倍でいんじゃね?」という世論が形成されていく。

 

この人は政策ではなく「そういうこと」に長けている。

 

釈然としないが、実存は本質に優位と居直る自民党。安倍長期政権に痛めつけられた国民生活、終わりの見えない感染症。政権と国民の意識は、ますます乖離する。「安倍さんでいんじゃね?」とのんきに構えてる場合ではないだろう。

 

 

こっちも『安倍再々登板待望論の出所は「ほとんど本人とその周辺」の不気味 聞こえ始めた「安倍さんでいいんじゃね?」の真相』と題したFRIDAY DGITAL  2021年05月25日の記事だ。

 

 

大体憎っくき自民の重鎮(安倍批判の溝手顕正議員)を蹴落とすために仕組まれた公費の1億5千万円(内1億2千万円が政党助成金が占める)だったと言って良いし、当時の安倍首相と菅官房長官の命だったかもと言えるし、一説にはこのカネ内閣官房機密費から出されたとも言われている。

要は「安倍1強体制」が生んだ驕りとも言えよう。

今更安倍再登板や二階古狸の回帰でもなかろう。これらウジ虫を我々国民は抹殺すべき(民主的に選挙で落とす)と筆者は考える。